元カノに借りていた50万円を返さずにいたら支払督促が届いた体験談
口約束でも法的に借金は成立していますので、借りたお金は返さなければなりません。私は昔つきあっていた彼女に50万円を借りたことがあるのですが、返さないまま別れてしまい、そのまま放置していと裁判所からの支払督促が届きました。
弁護士に相談して、最終的には分割で返していくことで話がまとまりましたが、その体験談をお話しします。
目次
突然、裁判所から特別送達が届きパニック状態になる
1年ほど前のことになります。
仕事を終えて帰ると、郵便局の特別送達が届いていると自宅にいた母親が心配そうに渡してきました。
見ると、差出人は簡易裁判所で、特別送達と書かれています。。
「えっ、裁判所から特別送達っていったい何?」
「何もしてないよ」
と軽いパニック状態になりました。
届いていたのは元カノからの支払督促
受け取ったその場で開封して中を見ると、「支払督促」とあり、請求者は半年ほど前に別れた元カノで、請求金額は50万円となっていました。
確かに元カノからお金を借りたことがありました。
それも50万円という大金です。
夜の街でケンカをして、相手への賠償金を払うために借りたものです。
ある日、会社の同僚数人と飲みに行き、次の店に行こうと向かったのですが、1人がべろべろに酔っていて足元がふらついているので、タクシーで行くことにしました。
距離にして地下鉄で一駅、車なら5分かからないでしょう。
通りかかったタクシーを止めて、その場所を伝えると「他をあたってくれ」と乗車拒否をされました。
そのことに立腹して、酔った勢いもあり、3人がかりでその運転手と車とを袋叩きにするかのように暴れてしまったのです。
繁華街でのケンカでしたので、すぐに通報され、パトカーが駆けつけ、警察署に連れて行かれて事情聴取をされました。
タクシー会社の社員も呼ばれたようで、長時間にわたる聴取と話し合いの末、最終的には当事者どうしでの示談で決着をつけることになりました。
相手の運転手は怒り心頭で、告訴すると激高していましたが、距離を理由にしたと思われる乗車拒否をしたこと、
それでも車に乗り込もうとした同僚を突き飛ばすようにして車から追い出そうとしたことがケンカの発端でした。
そのことで、私たちが一方的に悪いものではないとされ、タクシー会社の側も事を荒立てたり、大きくしたくないと、示談ですませたいとの意向を示し、私たちもそれに応じることにしました。
運転手からの被害届は出さず、事件にはならなかったのですが、損害賠償の支払い義務は残ります。
いくら相手に原因があったとはいえ、3人がかりで1人に暴行をくわえ、さらには車を蹴りつけるなどしているのは明らかにやりすぎであり、相手の治療費、慰謝料、旧行保証、車の修理費などでおよそ100万円を請求されました。
3人で均等に割って弁済することにしましたが、預金も何もない私に30万円はとてつもない大金です。
工面する手立てはなく、サラ金で借りるしかないかと考えて悩んでいると、その当時の彼女が「返すのはいつでもいいから」と50万円を貸してくれたのです。
「30万円でいい」といったのですが、「まだ何かあったら困るでしょ」と余分に貸してくれたのです。
そのお金を返さないままにしていました。
口約束だけで、借用書等は何も作っていなかった
元カノは、お金を貸してくれた時に「返すのはいつでもいいから」と言っており、借用書などの書類は作っていません。
口約束だけでお金の貸し借りをしたことになります。
私は友人や知人、親兄弟とのお金の貸し借りは「貸す」のではなく「あげる」と同じものだと考えていました。
今考えると恐ろしい勘違いですが、当時の私は本気でそう考えていたのです。
返してもらえなくても仕方がない、だから返ってこなくてもあきらめられる程度を貸してやればいい、そのような考え方を持っていました。
元カノが私にお金を貸してくれた時も、同じような感覚だろう、私にくれたものだと勝手に解釈していたのです。
だから借用書も作らず、返すのはいつでもいいと口約束だけで50万円を貸してくれたのだ、もともと返してもらうことなど求めていないのだと思っていました。
そのため、別れる時にも何の請求もされず、その後も何の連絡もないものと決めつけていたのです。
「それなのに別れて半年もたった今さら何で」と疑問に思いましたが、裁判所からの通告となれば無視するわけにもいかないでしょう。
私に直接連絡をせず、いきなり法的手段をとるのは、それだけ本気だということでしょう。
私はあせりました。
口約束の借金だとなめていたら証拠を突きつけられた
まず、ネットで支払督促について検索し、どれだけの強制力があるのか、放置すればどうなるのか、を調べました。
放置すれば訴訟に移行するようです。
いや、訴訟になれば勝てるかもしれない、口約束は契約とはいえないだろう、それに借用書など貸し借りをした証拠は何もないのだし、「もらったものであって、借りた覚えはない」と突っぱねればいいのではとの考えが浮かびました。
50万円など到底用意できるはずもないし、このまま放置して元カノがあきらめるのを待とう、仮に訴訟になっても負けることはないと無視することにしました。
しかし、支払督促が届いた2日後、今度は元カノからの「特定記録」のゴム印が押された郵便物が届きました。
開封して確認すると、50万円を私の口座に振り込んだ銀行の明細書と、当時私と元カノの間でやりとりされたラインの内容のコピーが入っていました。
ラインのやりとりは、誰が見てもお金の貸し借りが行なわれたとわかるもので、証拠となりえるでしょう。
無視を続けて逃げようと考えていた私は、逃げ道をふさがれ、奈落の底に突き落とされた気分になりました。
口約束でも借金は法的に成立している
どうすればいいのかわからず、困り果てた私は弁護士に相談することにしました。
弁護士の知人などいないので、区役所の無料法律相談を利用することにしました。
裁判所からの支払督促と、元カノから届いた書類を持っていき、事情を説明したところ、
- たとえ口約束であっても、お金の貸し借りの契約は成立する
- ラインのやりとりと振込明細書だけでも契約を裏づける証拠となる
の見解が出されました。
また、「返すのはいつでもいい」という言葉は、「期限の定めのない債務」と解釈され、その期限は貸した側が自由に決めることができるため、請求があればすぐに返さなければならないものなのだそうです。
しかし、50万円という大金は手元になく、払いたくても払うことができないと途方にくれていると、「まず本人に直接連絡をとって、返さずに放置していたことを謝罪すること」「お金を借りていることを認めること」「分割で返済させてもらえるように頼んでみること」の3つを提示されました。
月々5万円の分割で返済することになる
弁護士のアドバイスに従い、元カノに連絡をとることにしました。
まず、お金を借りたまま返さずに放置を続けたことへの謝罪、返済したいのだけど全額を一括で用意することは困難であること、分割での支払とさせてほしいこと、を書いた文書を作りました。
分割は月5万円を10回の支払にしてもらいたいと書きました。
その文書を元カノに送ったところ、10日ほど後に返信が届き、開封すると「金銭消費貸借契約書」と書かれた文書が2通入っています。
貸している金額は50万円であること、月5万円を10回にわたって支払うことが書かれていました。
その2通の契約書に署名と捺印をして返送すると、3日後に私の分の契約書と、元カノの銀行口座が書かれた書類が入っていました。
振込先が指定された書類には、「期限内に支払いがされたら、利息は不要です」と丁寧に手書きで書き加えられていました。
元カノの私に対する最後のやさしさでしょう。
胸が熱くなり、体が震えました。
その元カノのやさしさを裏切らないようにと、月々5万円を期日どおりに振り込み、完済しました。