払えるのに給食費を払わない親の増加で支払督促を送る例が増えています
子供の学校給食費を払わない親が増えています。
特に目立つのは、「払えるのに払わない」と考えられるケースです。
学校は給食費を払っていない家庭の子供にも、他の子供と同じように給食を食べさせます。
それをいいことに、学校給食費の支払いを拒否する親が増えています。
支払いをしている家庭から見れば不平等だと思えるでしょう。
では、学校給食費の未払いを続けるとどうなるのでしょうか。
目次
学校は給食費を払わない家庭の子にも給食を食べさせる
学校側の立場としては、給食費を払っていない子であっても、給食を食べさせないわけにはいかない事情があります。
まず、子供自身には何の落ち度も罪もありません。
そのため、払っていない家庭の子にだけ食べさせないことは、教育上大きな問題があります。
周囲の子供がみんな給食を食べている中で、1人、もしくは数人だけ食べさせないとなれば、罪のない子供の心を傷つけるだけでなく、周囲の子供に差別意識を植え付けることになります。
学校がそのような非人道的なことをするわけにはいかないでしょう。
もしそのようなことを平気でできる教師がいるなら、その人は教育者としての資格がありません。
また、学校教育においては、給食も教育のひとつであり、平等に教育を受けさせる義務があります。
本当に払えない経済状況の家庭は、学校給食費を免除される
収入が少なく、学校給食費の支払いが難しいと考えられる家庭は、その支払いが免除される制度があります。
「就学援助」という制度で、学校教育法に基づき、市町村が設けている制度です。
この制度は、学用品費、体育用品費、通学費、PTA会費、修学旅行費、郊外活動費など、学校生活において必要な費用のほとんどが補助されます。
学校給食費もその中に含まれているため、支払いが免除されるのです。
その就学援助の対象となる家庭、収入の基準は各市町村が独自に決めているようです。
生活保護や準要保護を受けている家庭、母子家庭などは、ほとんどの市町村で対象となっています。
それらに該当しなくても、年間の世帯収入が手取りで300万円を下回っている場合などは対象となる可能性が高いようです。
学校は、給食費を払わない親に対して、当然支払いのお願いをします。
そこで「お金がないので払えない」と返答されれば、就学援助の申請を勧めるでしょう。
先に書いたように、就学援助の対象となる基準は低いものと思われます。
申請しても却下されるような収入があるのなら、「払うことができない」とは言えないはずです。
学校側、そして市町村はそのような判断をしています。
学校給食費が私会計から公会計化に進んでいる
学校給食費は、もともとは「私会計」方式で会計処理がなされていましたが、小中学校の給食費の公会計化が進んでいます。
私会計とは、学校が独自に児童の家庭から徴収し、管理する方法です。
学校が徴収した給食費をもとにして、食材業者等への支払を行なっていました。
しかし、教職員が毎月学校給食費の集金や集計、食材費の支出監理、さらには未納の家庭への督促などを行うなど、その業務負担が大きく、本来の教育活動がおろそかになるケースが目立っていました。
それを懸念した市町村は、行政の歳入歳出予算に給食費徴収や管理の経費を計上する「公会計」の方式への変更を進めました。
公会計は、家庭から直接市町村の口座に学校給食費を振込、あるいは自動振替にて徴収し、市町村から食材業者に支払いを行う形式です。
この公会計方式に変更した場合、市町村の予算として計上することで会計の透明化を図れること、学校の教職員の教育活動以外の業務負担を減らせること、などのメリットがあります。
特に、教職員が未納の家庭への督促を行なうことは、精神面での大きな負担となっていたため、その業務がなくなったことは大きなメリットだといえるでしょう。
そのため、近年は学校給食費を公会計化する市町村が増加する傾向にあります。
それにともない、学校給食費の未納問題の対応も、学校から市町村へ移行することとなっています。
学校給食費の未納を、弁護士が回収する
増加を続ける学校給食費の未納問題の対策として、東京都練馬区は23区で初めて弁護士への委託を行ないました。
2014年に試験的な運用をして、その翌年から本格的に実施しています。
学校給食費を払っていない家庭に未納の連絡を行ない、支払いがなければ督促、その次に学校長が法的措置に移行するかを判断する手順がふまれています。
経済的に支払うことができない家庭には、就学援助の申請を勧めるなども行ないます。
その対象とならない、「払うことができるのに払おうとしない」親に対して、法的手段をとる方針です。
練馬区教育委員会は、区の収納課との連携により、未納が発生した際の初期対応から、最終的な法的措置までをマニュアル化した「学校給食費未納金の管理・徴収・催告等の手引き」を作成し、区内の各校に周知徹底しています。
そのうえで、区や学校の対応だけでは回収ができなくなっている事案については、弁護士に回収をすることとしています。
中でも特に悪質な事案に対しては、学校、教育委員会、収納課、弁護士による会議を行ない、学校長が提訴して、法的手段を以て回収することとなっています。
学校給食費を払わない親に、支払督促が送られる
法的手段の具体的な流れですが、支払いをしない親を学校長が提訴します。
手続は弁護士が行なうことになるようですが、裁判所に支払督促の申し立てがなされます。
その申立が有効であると認められれば、学校給食費の未納額が債務として確定し、裁判所から親に対して支払督促が送られます。
支払督促の無視を続けると、強制執行される
学校給食費だから、卒業してしまえば終わりだろうとお考えの方もいらっしゃるかと思います。
放置しておけば、じきにあきらめるだろうとたかをくくる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、支払督促が出されたとなれば、終わりになることもあきらめてくれることもないと考えるべきです。
税金が実際にそうです。
未納の税金は仮に自己破産をしても、支払い義務は残ります。
滞納すれば支払うよう通知がなされ、無視していると裁判所から支払督促が届き、それも無視を続けていれば預金、不動産、給与の差押えなどの強制執行がなされます。
学校給食費も同様の扱いとされています。
管理をしているのは学校ではなく市町村なのですから、卒業しても支払いを求められます。
強制執行は実際に行なわれています。
埼玉県鶴ヶ島市では、学校給食費4万円強を滞納した親に対して、1年間にわたり文書による通知や自宅の訪問によって、再三支払いを求めたのですが、面会もできず回答もない状態が続いたため、裁判所に支払督促を申し立てました。
その申し立ては認められ、債務が確定し、裁判所から支払督促が送られたのですが、それに対する親からの連絡がないため、市は強制執行の申し立てを行ない、裁判所は差押の命令を出しました。
その命令に基づき、市は親の給与に差押えを行ない、滞納額に利息分や裁判費用を加えた5万6千円余を回収しました。
まとめ
学校給食費を払わないままにすると、「支払いのお願い」程度の通知が届きます。
電話での連絡もあるかもしれません。
それを放置していると、次は弁護士からの督促文書が届きます。
そこには「支払わないままにしていると法的手段をとる」といった内容が書かれています。
それでもまだ無視を続けていると、実際に法的手段を進められ、裁判所から支払督促が届きます。
支払督促を無視すると、最終手段として、差押えが行なわれることになります。
学校給食費を払うことができない場合、まず就学援助の適用を申請しましょう。
行政側は、払えない状況にある親に無理に払わせることはせず、救済措置となる制度を用意しています。
その制度の対象外となる方は、学校給食費を支払うしかないものと考えるべきです。
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